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自治体 コンサルティング

大阪湾へ流入するマイクロプラスチックを未然に防止する!府内スポーツ施設における人工芝流出対策の取組とは?

 大阪府は、2019年のG20大阪サミットで共有された、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染ゼロをめざす「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を踏まえ、海洋プラスチックごみの流出対策やプラスチックの資源循環の推進等に取り組んでこられました。株式会社ピリカ(以下「ピリカ」)が令和2年度に大阪府より、大阪湾におけるマイクロプラスチックの実態把握調査を受託し実施した結果、大阪湾を浮遊するマイクロプラスチックの一つとして人工芝が確認されました。


大阪湾における調査風景

人工芝と推定されたPE試料

 このような結果を受け、大阪府は令和3年度に府内のスポーツ施設で人工芝の流出実態把握・回収した人工芝を用いた再資源化技術に関する把握調査(ピリカ受託)を始めました。

 令和4年度、引き続きピリカは大阪府の受託調査により、府内の数カ所のスポーツ用人工芝グラウンドにおいて、施設管理者や人工芝メーカーと連携をしながら、人工芝流出の実態、流出抑止効果の定量的な把握及び流出対策の具体化を目的とし、人工芝の損耗調査、流出対策設備の設置による捕捉量調査等、流出抑制ガイドラインの作成を実施しました。

1. 年数が経過したスポーツ用人工芝グラウンドで人工芝の損耗量を調査

人工芝の損耗量調査の様子

 人工芝のパイル(人工芝の葉)片は敷設後、使用していくうちに徐々に先端が削れたり切れたりして損耗していきます。人工芝の隙間に入れる充填材という物質もグラウンド外に流出することがあります。パイル片も充填材も合成樹脂等を主に原料としているため、流出すれば自然界のマイクロプラスチック汚染の原因となる可能性があります。そこでまずは人工芝が敷設されている施設でどれほどの流出があるのかを把握するために、令和4年度の調査では、府内の複数のスポーツ施設の人工芝損耗を実際に計測して損耗量の調査を行いました。

 調査は、ロングパイル人工芝施設(サッカー、野球場等)と砂入り人工芝施設(テニス)の、2つのタイプの施設で実施しました。人工芝パイルの根元から先端までの長さを、測定器具で何箇所も測っていきます。集まったデータをもとに、損耗量の分布推定図を作成し施設全体の損耗量を推定しました。ある施設では、充填材であるゴムチップを吸引し敷設時からの移動(減少)量を測定しました。

 結果、敷設量に対してロングパイル人工芝は年間1%前後の損耗、砂入り人工芝は年間2〜3%前後の損耗があることがわかり、損耗量は経過年数および使用頻度に比例することも明らかになりました。ゴムチップについては、敷設後8年以上経過したグラウンドの調査で、50%程度が移動(消失)している恐れが示唆されました。

2. 人工芝の流出はどのように防ぐ?流出対策の効果を検証

各施設に設置した人工芝の流出対策設備の例

 人工芝のパイル片や充填物が敷地の外部に流出するのを防ぐためには、流出する前にそれらを捕捉することが重要です。敷地の外周に設置されているフェンスに不織布バリア(住友ゴム工業(株)開発・提供)を設置し、飛散するパイル片や充填物の捕捉量を測定、効果を検証しました。さらに、排水溝にフィルター(住友ゴム工業(株)、積水樹脂(株)開発・提供)を設置し雨天時に雨水とともに流れてくるパイル片や充填物の捕捉量を測定し、フィルターによる流出対策の効果を検証しました。

 今回の検証では、どちらの手法もパイル片や充填物の捕捉が一定程度確認されました。ただし、損耗量(発生量)と実際の捕捉量(対策効果)にはギャップもあるため、今後はさらなる仮説検証をくりかえし、より正確な流出経路や流出量を把握し、効果的な対策手法を検討していく必要があります。

3. 府内スポーツ施設における人工芝流出対策を具体化

 これらの調査結果を踏まえ、府内人工芝施設における流出対策をより具体化するため、大阪府と協力し、大阪府内の人工芝施設におけるマイクロプラスチック流出抑制に関するガイドライン Ver.1.0を作成しました。(2023年3月大阪府HPにて公開)

 ガイドラインでは、人工芝流出抑制策の基本的な考え方のもと、人工芝の導入を検討する段階から施工、運用、改修の段階まで、フェーズごとにどのような対策を実施していけばよいのかが施設関係者向けにわかりやすく記載されています。作成にあたっては、公益財団法人日本スポーツ施設協会や人工芝メーカー(住友ゴム工業株式会社、積水樹脂株式会社、ミズノ株式会社)等にもご助言・ご協力いただきました。

 今後は、府内施設関係者に本ガイドラインを周知・啓発用に活用していただくことを目指して、ピリカも流出対策の支援を行っていきます。

4. さいごに

 人工芝のマイクロプラスチック流出問題は、ピリカや関連の調査等で広く認知されるようになりましたが、流出の実態把握や具体的な流出対策の導入については各施設や地域によって濃淡があります。大阪府は先駆的に取り組みをはじめた自治体の一つであり、ここから得られた知見は様々な自治体や関係機関に役立つと考えています。

 正確な実態把握と効果的な流出対策、わかりやすい仕組みの運用方法など、課題は少なくはありませんが、2050年までに海洋プラごみ新たな汚染ゼロをめざす「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」実現のためにも、これからもピリカはこの問題に積極的に取り組んでいきます。


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自治体名:大阪府 環境農林水産部 脱炭素・エネルギー政策課 戦略企画グループ 業種:地方自治体 調査サービス:コンサルティング、人工芝流出対策

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