清掃活動の輪を広げるために“散乱ごみ分布状況”のデータも活用
岐阜県は、昭和62年から35年間に渡り「美しいふるさと運動」として清掃活動を続けてこられ、県内の清流を守ろうという環境保護意識を昔から高く持っておられます。タカノメ徒歩版、ピリカ 自治体版、そして全国自治体初導入となったタカノメ自動車版と複数のサービスをご利用いただいています。今回はそれぞれのサービスの導入経緯や、併せてご利用される効果について、岐阜県廃棄物対策課にお伺いしました。
1. 昭和62年から続く清掃活動の様子
弊社(株式会社ピリカ)のサービス導入前から続けている環境保全活動についてお聞かせください。
昭和62年4月から「美しいふるさと運動」として、県民、事業者、関係団体、市町村等と連携し清掃活動を行っています。特に毎年5〜6月頃と9〜10月頃にプラごみゼロ・キャンペーン週間を設けており、県内各地が清掃活動を実施されています。
30年以上も清掃活動が継続されてきたのには、どういった背景があるのでしょうか?
水・川・清流という自然の財産を大切にする意識が強く、それを清流の国岐阜憲章として形にしていることが背景にありますね。岐阜県には、生活用水などの機能を持つ川を景観保全の観点からも大切にしようという意識があり、それが清掃活動継続を支えています。
2. サービス導入理由は、海洋ごみの発生原因となる散乱ごみ問題を県全体で共有するため
岐阜県内の若物をはじめ幅広い世代に海洋ごみ問題をはじめとする清掃活動など環境問題解決につながる行動を浸透させたい、というのが大きな理由です。
G20大阪ブルー・オーシャン・ビジョンなどで海洋ごみ問題に注目が集まっていることを受け、「清流の国ぎふ」として美しい川の保全に気を使っていることもあり、岐阜県は内陸県ながら、海洋ごみ問題解決に関する地域計画を作りました。岐阜県の環境に関する県民等意識調査では、
- 20代のうち清掃活動に従事している人は1割に満たないこと
- 環境問題について「何をどう行動すればよいか分からない」と感じている方が4割を占めること
などが明らかになりました。県として環境問題の啓発に取り組んではいましたが、若い世代をはじめ十分に浸透していないのが実態でした。
若者への清掃活動の浸透方法を考える中、大学での出前講座で「どんなきっかけがあれば清掃活動に取り組みますか?」と聴講者に質問したところ、「自分たちが普段使うようなSNSからなら取り組めそう」と声があり、清掃活動に関するツールを探す中でSNSピリカを知りました。ゲーム感覚で取り組めて若者も気軽に参加しやすいのではないかと考え、SNSピリカの活用を考えました。
まず最初に導入いただいたタカノメ 徒歩版について、導入理由をお聞かせください。
清掃活動という具体的な行動をしてもらうときに「どこをやったらいいのか」「どれだけ綺麗になったのか」が地図として見えると、県民の方にとって取り組みやすいと考えたからです。これは、前述の若者への清掃活動の普及啓発のためにも有効だと考えました。
環境問題に取り組む際、「何がどれくらい問題なっているのか」「どんな施策をどれだけすればいいのか」などが、目に見えづらく分かりにくいことがまず課題になります。これを解消するためには、散乱ごみ分布の現状の見える化によって課題を把握・共有することが大事だと感じました。また、清掃活動の成果も見える化され、「これだけ頑張った」というモチベーションアップに繋がり、より清掃活動を活性化することができるだろうという考えもありました。
タカノメ 徒歩版導入後、岐阜県民・県庁ではどのような効果・変化がありましたか?
散乱ごみの地理的な分布と定量的なデータが把握でき、課題を共有できたという効果がありました。
海洋ごみ対策について地域計画策定のために2022年11月、最初のタカノメ調査を行いました。その結果バーベキュー場周辺に紙ごみが多いことが分かりました。地元で清掃活動に取り組んでいただいている方に、活動場所の的を絞るツールとして情報提供できている点で効果を感じています。今までなんとなくで清掃場所を決めていたことを考えると、タカノメで得たデータは有効だと感じます。
また、清掃活動後のタカノメ調査による散乱ごみ分布データを時系列で記録していくことで、清掃活動の効果が把握でき、次回の活動に活かしたりモチベーションを向上させたりする効果も期待できそうだと思いました。
「散乱ごみ流出状況はごみの回収量で把握できる」という意見もある中で、タカノメ 自動車版を導入された理由はなんでしょうか?
タカノメ 自動車版を導入して散乱量をより詳細・正確に把握することが必要だったからです。
実際にタカノメ 自動車版で調査した結果から、住民あるいは自治体担当者が認識していなかった場所で、より多くのごみが落ちていることが判明しました。
また、タカノメ 自動車版は、団体の清掃活動によるごみの回収量の記録よりも、より詳細な地点レベルで且つ全地域同じ基準・尺度でごみの分布状況を把握することを可能にするという点もポイントでした。
さらに、ピリカ 自治体版ではどの地域で散乱ごみ回収量が増えているか確認できますが、そのデータだけでは「そもそもその地域が汚くなっているから回収量も増えているのでは?」という疑念を拭えません。逆に散乱量だけ測っても、ある地域で清掃が行われたことで一時的にきれいになっている可能性もあり、正確な状況は分かりません。回収量と散乱量の両方を測って、初めてごみの流出実態や対策の効果を明らかにできるのではないかと思います。
前例のない中でのタカノメ 自動車版の導入にハードルはありませんでしたか?
DX推進の追い風もあり、導入にハードルはありませんでした。行政サービスにDXを取り入れようという潮流の中で、若い世代の清掃活動の浸透度を上げるSNSピリカの取り組みと合わせて、タカノメ自動車版でDXを展開していこうと考えています。
3. ピリカのおかげでイベント以外でもごみを拾うように
これはタカノメ徒歩版の調査の時も同じで、特に怪しまれることはありませんでした。プライバシーの問題などもなく、ご理解いただいた上で調査を遂行できました。
タカノメ 徒歩版、自動車版の調査結果をピリカ自治体版「見える化ページ」に反映したのは全国初取り組みとなりますが、どのような背景だったのでしょうか?
今回の調査結果から得られた散乱ごみの分布状況などの「見える化」により、県民が、地域のごみの状況を知り、海洋ごみに対する問題意識を高く持っていただくことを期待するとともに、オール岐阜での自主的な清掃活動を推進したいと考えています。また、見える化ページを活用しながら、市町村と連携した環境学習を交えた清掃活動の実施や、沿岸県との相互連携など海洋ごみの発生抑制対策も推進できればと思います。
この考え方だともっとごみを拾う人が増えると思います。
一方、SNSピリカに対する反応はいかがですか?
県民の方から「やってみるとゲーム性があって、楽しくごみ拾いができる」というお声を聞いています。投稿すると短時間で「ありがとう」がたくさんもらえるのが嬉しいというコミュニケーションの側面でも評価いただいてますね。
高校生やNPO主催の流域圏での清掃活動でピリカを使ってもらっている中で、「一回(清掃活動を)やってみると、清掃イベントの場ではなくても、ごみが落ちていたら拾うというように清掃活動への意識が変わった。」という反応もありました。
また、2022年10月には同じくピリカ 自治体版を活用している富山県と同日開催での連携イベントを実施しました。これもSNSピリカという参加を促せるツールがあったから実現できたことだと思います。
行政が散乱ごみ問題に参画することには、どんな意義がありますか?
幅広い世代や、地域との清掃活動を実施できるというメリットがありますね。
清掃活動というと広くて自治会レベルでの取り組みになりがちなのですが、高齢化が進んでいるということで自治会やコミュニティとして行うことにも限界があります。そこで行政(岐阜県)が散乱ごみ問題に関わることで、高校や大学などへの若い世代への声かけができるようになり、幅広い世代の方に清掃活動をしてもらえるようになったことがSNSピリカなどのサービスで感じられました。
4. 今後は沿岸県と連携して海ごみ問題に取り組む
タカノメ/ピリカ 自治体版を用いて今後どのような取り組みを行いたいですか?
タカノメ自動車版に関しては賛同いただける自治体に声をかけながら、住民の皆様に散乱ごみを見える化したヒートマップを提供したいと考えています。
住民の方には居住地の散乱ごみ状況を客観的に把握した上で清掃活動に取り組んでいただきたいと考えています。清掃活動の効率を上げたり、若者世代に散乱ごみの状況を周知したりする上でもさらなるデータが有効ですね。
また、ピリカ 自治体版には清掃活動者同士の繋がり向上を期待しています。岐阜県は内陸県ですので、海洋ごみ問題にピンと来ない住民の方も多いと思います。そういう状況の中で、タカノメ調査による散乱ごみのヒートマップやピリカ 自治体版見える化ページを通して情報を繋げていき、海洋ごみ問題への対策が広がっていけばいいなと思います。
団体名:岐阜県庁 業種:地方公共団体 従業員規模:約5,000名(公安委員会・教員委員会を除く) ご導入サービス:ピリカ自治体版