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自治体 コンサルティング

ビーズクッションなどのビーズ製品の適切な廃棄と流出対策~大阪府の流出実態調査と啓発に向けた取り組み~

はじめに

 令和6年度、海洋プラスチックごみの流出防止やプラスチック資源循環の推進を目的とした大阪府の事業の一環として、「一般廃棄物収集時におけるビーズ製品からのプラスチック製ビーズの流出状況等に係る調査及び啓発ツール等作成業務」をピリカが受託し、ビーズの流出・飛散抑制対策に資するための調査、分析、及び啓発ツールの作成を行いました。本事例では、ピリカが実施した調査の内容、得られた知見、作成された啓発ツールについて紹介します。

 海洋プラスチックごみ問題への関心が高まる中、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロとする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が国際的に共有され、2040年への前倒し目標も掲げられています。大阪府においても、この問題に対して積極的に取り組んでおり、「おおさかプラスチック対策推進プラットフォーム」を中心に、ビーズクッション製品などのビーズ流出対策に関する議論が進められてきました。令和5年度の河川におけるマイクロプラスチック実態把握調査で環境中からビーズが数パーセント程度確認され、同年実施されたアンケート調査では、府内市町村の半数以上で一般廃棄物収集時にビーズ製品からのビーズ流出が確認されたことからも、その対策が喫緊の課題となっています。

パッカー車に投入したビーズが破裂した瞬間

1.やわらかくて軽い発泡ビーズ

 クッションやまくら、ソファなどに使用される発泡ビーズは、プラスチック樹脂を発泡させて作られた小さなやわらかい球状の粒です。発泡ビーズを充填した製品は、軽量で体にフィットしやすい特性を持ち、快適な座り心地や寝心地が得られます。発泡ポリスチレン(EPS)などの素材で作られ、衝撃吸収性や柔軟性にも優れており、緩衝材や梱包資材としても幅広く利用されています。
 ただし、便利で快適な一方で、クッション製品などのビーズの粒径は0.3mm〜6mm程度と細かく、また静電気を帯びやすいため、一度飛散・流出してしまうと回収・清掃が困難になります。最近では、適切に廃棄されなかったビーズ製品が、ごみ回収の際にパッカー車で破裂し、路上に流出する事例が報告され問題となっています。

静電気を帯びた発泡ビーズ(粒径:1mm)

2.アンケート調査による実態把握

 大阪府内全市町村(43市町村)及び大阪府外の政令指定都市(10都市)の一般廃棄物収集業務担当部署を対象にアンケート調査を実施しました。この調査の目的は、ビーズ製品の分別・出し方、収集状況、流出状況、流出時の対応、流出対策等に関する現状を把握し、収集過程での流出問題への対応策や予防策の改善指針を提供することです。

 アンケート調査の結果を一部紹介します。ビーズ製品の収集時にビーズが流出した事例はありますか?という質問には、6割を超える市町村があると回答しました。ビーズの路上への流出で抱えている課題については、「ビーズの清掃に時間がかかり、収集業務に遅延が生じる」「清掃を行ってもビーズを回収しきれない」という回答が多くなりました。円滑な収集業務や環境流出への懸念が浮き彫りになっています。(アンケートの全回答はこちらに掲載)

3.再現実証実験による流出状況と回収方法の調査

 府内の廃棄物処理施設で一般廃棄物収集時にパッカー車からビーズ製品が飛散・流出した状況を再現する実証実験を実施しました。この実験の目的は、パッカー車にごみ袋に入れたビーズを投入し、破裂した際の流出量や流出個数を推計し、路上に流出したビーズの回収方法ごとの回収量や特徴を比較・検討することです。
 実験では、既存のマイクロプラスチック調査に関する文献調査に基づき、粒径1mmのポリスチレン製発泡ビーズを対象製品として選定しました。ごみを積載したパッカー車に、様々な条件下でビーズを投入し、破裂・飛散の状況を記録しました。破裂実験から、パッカー車でごみ袋に入れたビーズが破裂した場合の流出率は1〜2割程度であると推計されました。
 次に、実験的にビーズを路面に散布し、「掃除機」「箒・塵取り」による回収量を計測しました。その結果、いずれの方法であっても、路上に散布したビーズの8〜9割程度を回収できることがわかりました。ただし、実験は平坦なアスファルトの路上で実施しているため、実際の流出現場では、舗装の隙間および排水溝などの路面の状況、風雨等天候の変化、収集しながら清掃にあてられる時間の制限により、ビーズの回収率は本実験で得られた成果よりも下がることが予想されます。

再現実証実験の様子

4.流出対策の提案と啓発ツールの作成

 アンケート調査や再現実証実験の結果を踏まえ、一般廃棄物収集時のビーズ製品の流出対策を以下のように提案しました。


  • 排出時の工夫:ビーズ製品と識別できる紙を貼る、ビーズ製品を解体しないで排出する、などの対応を推奨する
  • 業務支障の周知:ビーズ製品の流出によって廃棄物収集業務に支障が生じた事例を周知し、適切なビーズ製品の排出を促す
  • 住民への啓発活動の強化: ビーズ製品の適切な排出方法を周知するため、市町村のホームページや分別案内冊子、スマホアプリを活用した啓発を行う
  • 製造・販売側の協力: 自主回収・リサイクルの推進や、商品の取扱説明書にビーズの廃棄方法に関する注意点・留意点を記載するなどビーズ製品の適切な廃棄方法に関する啓発活動を強化する。(※関連法令を遵守のうえ実施)
  •  環境負荷の視点からの啓発:自然環境へのビーズの流出が、河川や海洋の景観のみならず、生態系にも影響を及ぼす可能性があることを周知し、環境負荷の視点から適切な排出を促す

 これらの対策を推進するため、ビーズ製品の適切な排出方法や流出事例、対策、回収方法についてまとめた事例集、市町村等が自由に活用できる啓発用イラスト・写真・動画、チラシ・ウェブページのひな型を作成しました。 (ひな型はこちらのページの「取組成果」のパートよりダウンロードが可能です。)


啓発用チラシのひな型

さいごに

 本業務を通じて、一般廃棄物収集時のビーズ製品からのプラスチック製ビーズの流出実態が明らかになり、効果的な対策と啓発の方向性を示すことができました。調査結果や分析、啓発ツールは、大阪府内の市町村におけるビーズ流出問題への対応を支援する一助となることが期待されています。ピリカは今後も、国内外の関係機関と連携しながら、プラスチック流出問題の解決に向けた画期的な手法の開発と有効性の高い対策の提案に取り組んでまいります。


おおさかプラスチック対策推進プラットフォームの取組成果のページに掲載された情報はこちら

第2回おおさかプラスチック対策推進プラットフォーム会議の資料はこちら

大阪府 マイクロプラスチック実態把握調査に関する情報はこちら

自治体名:大阪府 業種:地方自治体 調査サービス:コンサルティング

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