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企業・団体 河川・海ごみ調査(アルバトロス) コンサルティング

メコン川のプラスチック流出実態を調査〜国連環境計画(UNEP)CounterMEASUREⅠ&Ⅱプロジェクト〜

 近年著しく発展してきた東南アジアでも、日本と同様にプラスチックの自然界流出が問題になっています。廃棄物処理のインフラや回収システムの整備が発展に追いついていない地域も多く、状況はより深刻です。この問題の改善に向けて、日本政府と国連環境計画(UNEP)は、アジア地域における海洋プラスチックごみ対策支援プロジェクト「CounterMEASURE」を進め、プラスチック汚染の発生源の追跡と汚染の防止策の提案を行いました。

 株式会社ピリカ(以下、「ピリカ」)は、2019年から2022年、「CounterMEASUREⅠ」「CounterMEASUREⅡ」の両プロジェクトにおいて、独自に開発したマイクロプラスチック専用調査装置「アルバトロス」を投入し、東南アジア最大の河川であるメコン川流域の調査を実施しました。

1. 4か国にまたがるサンプリング調査

 国際河川であるメコン川は、複数の国を通って海に流れます。ピリカは、4か国(タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム)のメコン川流域・支流において、「CounterMEASUREⅠ」では33箇所、「CounterMEASUREⅡ」では60箇所(乾季・雨季の2シーズン計120回)のサンプリング調査を行いました。サンプリングは、各国の大学や研究機関である現地パートナーと連携し、様々な条件設定のもと(調査に必要な水深、土砂の流入が少ない、安全である等)、主要都市に近いサンプリングポイントを選定しました。選定地は、汚染源や汚染経路の分析のため、水量が多く流れている箇所と水量が少なくプラスチックが溜まりやすい箇所の両方を含んでいます。

マイクロプラスチックの採取選定地

2. 低コスト&短時間&どこでも調査が可能!小型調査装置「アルバトロス」

 マイクロプラスチックのサンプリング調査は、船に専用のネットをとりつけて採取する方法や、ポンプで水をくみあげて採取する方法などがありますが、コストや使用場所の制限といった制約があります。ピリカは、創業当初から、低コストで膨大な時間をかけずにどこでも調査ができる汎用性の高いマイクロプラスチック調査装置の開発に取り組んできました。「CounterMEASURE」プロジェクトでは、改良を重ねた「アルバトロス7号機」を投入し、サンプリング調査を実施しました。「アルバトロス」によるマイクロプラスチックの採取は、従来の方法と遜色のない採取が可能であることも検証されています。

 「アルバトロス」のサンプリング調査は、ピリカの専門スタッフが現地やオンラインで現地パートナーに技術指導を行いながら実施されました。これにより機動性の高い柔軟な調査が実現し、多くの有用なデータを集めることができました。ピリカは、プラスチック汚染に関するテクノロジーの普及にも貢献していきたいと考えています。

アルバトロス7号機

現地パートナーがアルバトロスを受け取っている様子

現地パートナーによるアルバトロスでのサンプル採取の様子

3. 採取されたサンプルの分析

 現地で採取されたサンプルは日本に空輸され、国内設備で分析を実施しました。FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた成分分析のほか、顕微鏡で外観や厚みの測定を行います。

 「CounterMEASUREⅡ」の調査では、120箇所から3000個以上の固形物が採取・分析され、2400個以上がマイクロプラスチックと同定されました。分析結果はデータベース化し、次に述べるプラスチック製品データシートと照合し、マクロプラスチックが何から発生しているのかを特定していきます。

「CounterMEASUREⅡ」の120箇所で採取されたマイクロプラスチックの成分分析結果

「CounterMEASUREⅡ」で採取されたマイクロプラスチック

4. プラスチック製品データシートから発生源を探る〜導き出される効果的な対策〜

 浮遊しているマイクロプラスチックの由来を特定するためには、実際に使われているプラスチック製品と照合する必要があります。まず現地パートナーの協力のもと、河川や水路に溜まったマイクロプラスチックよりも大きなマクロプラスチックを回収し、分析にかけて照合に有効なパラメーター(成分、色、厚みなど)を含むデータシートの基を作成しました。これにより、流出懸念の高いプラスチック製品のデータを効率的に収集できます。

 次に、現地パートナーを通じてプラスチック製品の製造・販売に関わる業界関係者にヒアリングを行いました。ピリカでは、過去に国内で実施してきたマイクロプラスチックの発生源調査から、製品カテゴリごとに主要企業や業界団体へヒアリングして得られた知見を蓄積しています。この経験をベースに、日本とは異なるプラスチック製品の生産・消費工程の実態を把握するため、生産・消費の実態を知る現地の複数の業界関係者から流出製品を特定する上でのヒントを得て、データシートを改良していきました。

 最後に現地の実態に即した流出懸念の高いプラスチック製品データシートと、メコン川流域から採取されたマイクロプラスチックの分析結果を照合し、製品特定を行いました。特定されたプラスチック製品のひとつの例は、スポンジです。業界関係者へのヒアリングから、食器洗浄用のスポンジを毎週買い替えていることがわかりました。そこから、より耐久性の高いスポンジ、排水溝のフィルター使用、天然素材への代替など、具体的な解決策を導き出すことが可能となりました。

 ただ、この照合作業ですべてのマイクロプラスチックの発生源となる製品を特定することはできません。今後も、マイクロプラスチックの発生源の特定がしやすくなるように、データの充実と改良が求められます。ピリカは、アルバトロスによるマイクロプラスチックの採取やデータシートの開発手法を公開・普及させることで、問題解決の波が拡がっていくことを目指しています。

現地企業とのヒアリングの様子

プラスチック製品データシートの使い方

さいごに

 プラスチック汚染は世界規模の問題として、広く知られるようになりました。私たちの生活に浸透しているプラスチックの流出対策は容易なことではありませんが、「CounterMEASUREⅠ&Ⅱ」プロジェクトで得られた成果から、確実かつ効果的な調査手法をよりグローバルに普及させることで、解決のスピードを加速させることができると考えています。今後もピリカは、国際機関や国内外の関係者と連携し、問題解決に向けた画期的な手法の開発と有効性の高い対策の提案に取り組んでいきます。

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団体名:国連環境計画 (UNEP) 業種:国連機関 調査サービス:アルバトロス、コンサルティング

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