路上散乱ごみの経年変化を公開。きれいなまちづくりを多様な人たちの手で!
東京都渋谷区はスクランブル交差点のある渋谷駅周辺を真ん中に、南は恵比寿や広尾、北は笹塚や幡ヶ谷、原宿の竹下通りなど、エリア毎に文化があり、区外、海外からの来訪者も多い地域です。繁華街もあれば、住宅街、オフィス街もあり、1990年代以降ゆるやかに人口は増加傾向にあり、現在約24.5万人です。今回はさまざまな人が集う人気の街、渋谷区で「きれいなまちづくり係」をされている中尾さんにお話をうかがいます。
1. 渋谷区のまちづくり
ーー「きれいなまちづくり係」とはどんなお仕事なのですか
ポイ捨てごみ、たばこ、落書き。この3つの対策が主な仕事です。ポイ捨てごみと落書きはきれいにすることと再発防止、たばこは分煙や受動喫煙防止のために動いています。街に出ることも多くて、色んな人がこの渋谷のまちづくりに携わっていることがわかりますし、その地区の環境整備はとてもやりがいがあると感じています。区内では地区ごとに地区美化推進委員会があり、自分たちの地域を自らきれいにしてくださっています。住民だけでなく企業の方も参加して、地域に根ざす人たちが一緒に落書きを消したり、ごみ拾いをしたり、皆さんの活動がきれいなまちをつくっているんです。
2. ポイ捨てごみ調査を続けて5年のワケ
ーーごみ分布調査・タカノメ徒歩版によるポイ捨てごみの調査を継続しているのはなぜですか
区の重要な課題は路上散乱ごみ、いわゆるポイ捨てごみです。近年、非常に多くなってきていて、住民の方からの通報も増えています。区ではタカノメ徒歩版による調査を始めて5年になります。調査がないと、ごみ量の増減や傾向などはどうしても職員の感覚に依存せざるを得なくなります。現在は過去5年間のデータがあり、それを見える化できている、ということは非常に意義のある事業だと思っています。区では環境学習として小学校〜大学まで授業をすることもあるのですが、ポイ捨てごみの量をデータとして数値で伝えることができます。行政においてもデータの利活用は求められていますし、内部だけではなく対外的に渋谷の路上散乱ごみの状況を数値で知っていただけることは大きなメリットです。
調査は渋谷、甲州街道、原宿、恵比寿、代々木の5箇所で行っています。調査結果からも渋谷駅やセンター街といった場所がずば抜けてごみが多いということがわかっています。感覚値として持ってはいたのですが、タカノメ徒歩版調査により見える化され、地点間比較でも明らかになっていることで、我々が力を入れるべきエリアだと判断することができています。きれいなまちは、お店や企業、お住まいの方、たくさんの方と一緒につくっているので、情報共有できることも非常に助かっています。
ーー渋谷区ならではのごみ対策の工夫はありますか
そうですね、やはり若年層が多いので、その点では工夫が必要ですね。住民の方以外にも初めて渋谷を訪れる方は外国人観光客も含めて非常に増えています。まちの美化を保つための啓発、区のルールをしっかり伝えるために、多言語での表記はもちろん、サッカーの長友佑都選手によるセンター街での環境啓発を日本語、英語でアナウンスするなど、いろんな方に届くよう取り組んでいます。
また、喫煙所については、「(渋谷区)安全・安心なまちづくりのための大規模建築物に関する条例」で延床面積1万平方メートルを超える建築物内には誰もが利用可能な公共喫煙施設の設置が義務付けられています。住民の方、来訪者の方が過ごしやすくするためのルールに則ったコーディネートもわたしたち行政の役割なのですが、やはりこれだけ多くの方が集まる街ですので、民間の皆様のご協力が不可欠です。
3. 渋谷らしく、多様な人たちと共に渋谷のきれいをつくっていく
ーーポイ捨てごみ調査データの活用をお聞かせください
現段階では、ごみの路上散乱量をデータで可視化するところまできています。このデータの活用が次のステップと考えています。区では令和5年度でなんと5,550人もの方が清掃活動をしてくださったのですが、これは区の清掃用具の貸出を利用された方の人数です。ということは実際にはもっと多くの方が活動してくださっています。ボランティアの皆さんにデータをうまく届ける、つまりごみの多い場所で活動いただけるようにデータを活用していくことを進めていきたい、と考えているところです。具体的な方法はこれから検討になるのですが、渋谷区は2016年に策定した基本構想「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」に基づきICT化が進んでいるところも強みですので、わかりやすく情報を届けたいですね。
清掃活動が地域の活動における交流の場になっていることもありますし、4月28日、428=「渋谷の日」には春の一斉清掃活動、また秋には条例啓発キャンペーンを実施しています。その日・時期には鉄道関係、商店街、警察、地域の方ともう本当に色んな方々が参加してくださって、みんなで一緒にまちを綺麗にしましょう、って取り組んでいて、一体感を感じます。イベントをしますよ、って伝えた時に事業所の方も地域の方も協力してくださる。とても渋谷らしくていいんです。多様な渋谷の方達へ、環境に興味がなかった人に対しても輪が広がっていく、そんな取り組みに力を入れていきたいですし、渋谷区内の対策だけではなく、近隣の区とも連携して、よりきれいなまちを共につくっていけたらと考えています。
自治体名:東京都渋谷区 業種:地方公共団体 ご導入サービス:タカノメ徒歩版