SDGs未来都市、「はまっ子の底力x 清掃活動DX」でまちを美化
横浜市は、1889年の市制施行から134年の歴史を誇る、日本を代表する大都市の一つです。人口は約377万人、港湾工業が盛んな東側の臨海部や、商業・観光施設が立ち並ぶみなとみらい21地区、さらには緑地・農地などもある郊外区など、実に多彩な街並みを持つ市です。市内には大小さまざまな河川が流れ、世界最大規模の中華街や、客船が停泊する美しい港もあり、これらを目当てにコロナ禍前には年間3600万人が訪れていた一大観光都市でもあります。
そんな多くの来街者を迎える横浜市では、近年、繁華街におけるテイクアウト品のポイ捨てごみや、郊外エリアでの大型の不法投棄ごみが問題となっており、地域住民・市内活動団体・市職員をはじめとする多くの人々が、美しい横浜の街を維持していくために日々活動されています。
今回のインタビューでは、横浜市の街の美化活動に取り組む、横浜市資源循環局 街の美化推進課の皆様にお話を伺いました。2016年からご導入いただいているピリカ自治体版「見える化ページ」の運用を通して分かってきたことや、タカノメ徒歩版の調査結果を通じて横浜市が今後どんな街の美化活動を推進しようと考えているのかなどをお訊きしました。
1. 横浜市の街の美化の推進力は、市民・企業・団体による「地域力」
ーー横浜市の街の美化活動
これまで横浜市では、業者委託や土地管理者との連携や、ポイ捨て防止など環境意識向上のための啓発活動を通した美化活動を行ってきました。
ですが、実は横浜市の街の美化活動の中心にあるのは、住民の皆様や、市にオフィスを構えている企業・団体様による自発的な清掃活動なんです。これは「見える化ページ」導入前から続く、横浜市の強みです。
こうした活動は、地域の方々が自発的に取り組んでくださる場合と、本市が呼びかける場合の両方がありますが、大部分がボランティアによるものです。現在も皆様の活動には大変感謝しております。
例えば、「ハマロード・サポーター」という、身近な道路の清掃や美化活動等を行う制度には、多くのボランティア団体が登録くださっています。このように、横浜市における街の美化は、市が活動をとりまとめているというよりも、地域の皆様が自発的に活動して下さっていることで推進されています。
私たちも「見える化ページ」から皆様の精力的な活動を拝見しており、本当にたくさんの方々がご尽力いただいていることを、大変ありがたく思っています。
ーー2016年の「見える化ページ」導入から6年で見えてきたこと
ピリカさんから毎月届く報告書によると、「見える化ページ」に表れるSNSピリカ利用数は年々増加傾向にあり、ごみ拾いの参加者数・投稿数・利用アカウント数、全ての数字が伸びています。特に令和3年度以降は急増していますね。これは、コロナの影響で対面での清掃活動ができなくなってしまった代わりとして、個々で活動しながらもお互いに繋がり合うことができるツールとしてSNSピリカが普及したのかなと思います。また、昨今SDGsがメディアで取り上げられていることもあり、身近にできるSDGs活動としてごみ拾いを始められた人がいるのではないかと考えています。
また、他にも分かってきたことは、1人あたりが拾っているごみの数はそこまで変化がないということです。そのため、拾われるごみを増やすためには、「もっとごみを拾いましょう」と呼びかけることよりも、ごみを拾ってくださるボランティアの皆様をいかに増やしていけるかに注力しております。
委託清掃や不法投棄の撤去には多額の費用がかかってしまいますので、今後も地域の皆様のお力添えをいただき、街の美化に努めていきたいです。
ーー「見える化ページ」の反響
利用者の方から「子どもがポイ捨てしてしまったことをきっかけに、子どもとごみ拾い活動を始めた」というお話を耳にしました。他にも、SNSピリカ内で知り合った方同士で一緒にごみ拾いをしている例もありまして、清掃活動の活性化に寄与しているなと感じています。企業の方からは、「見える化ページ」のページ下部にある「参加団体等一覧」のところに名前が載るのが嬉しいというお声もいただいております。
また、本市組織内からは、部署の活動のPRに使っているという話もあります。あとは、街の美化について課題を抱えていらっしゃる他自治体さんから、ピリカの利用についてお問い合わせをいただくこともあります。
ーー地元で連携することで、企業や団体によるピリカアカウント増
本市は、企業が行う清掃イベントの後援や、ボランティア清掃で発生したごみの回収などを通じて、清掃活動の支援を行っています。また、企業の方が開いている清掃に関する会議に本市も参加し、SNSピリカでの投稿をお願いするといった活動もしております。
さらに2019年からは、SNSピリカに新規登録・投稿いただいた方向けに、横浜市のオリジナルトングをプレゼントするキャンペーンを実施しており、こうした活動も利用者数拡大につながっているのではと感じています。
2. 美化活動の効果測定として、タカノメ徒歩版調査を開始
ーー令和3年度の市民意識調査では、街の美しさに対する市民の実感には差がある結果に。
瀬谷区、泉区、金沢区などの郊外区では「清潔できれいな街」という実感が高い一方で、西区、中区、鶴見区などの来街者や人口が多い区では、その実感が薄いのが意識調査から分かりました。
特に商業施設が多く立ち並ぶ地域には、食べ歩きやテイクアウトによる容器包装のポイ捨てが多いという声が寄せられており、これが満足度の差に繋がっているのかもしれません。
他にも「清掃活動が目に留まりやすい地域か」が挙げられます。横浜市の自治会は非常に整備されており、自治会による定期的な清掃活動が住宅地等でされていることが多いです。こうした取り組みは市民の方々の目に留まりやすいので、自然と満足度向上につながっているのかもしれません。
横浜市も、「来街者が多い地域の満足度向上が街の美化における重点課題である」と認識しておりますので、地域の商店街連合会や地元企業と連携し、清掃啓発を積極的に実施して、マナー向上に日々努めております。
ーーテイクアウト品関連のポイ捨てが目立つ
コロナ禍の影響を受けているここ3年間は、外食自粛の期間があったこともあり、屋外でのんびりできるような公園などに、空き缶・ペットボトルと一緒にお弁当やおつまみのプラスチック容器がポイ捨てされていることを目にする機会が多かった印象です。
そこで横浜市では、ポイ捨て削減の取組として、地域の商店街連合会や地元企業と連携し、清掃啓発を積極的に実施してマナー向上に努めるほか、美化重点地区(市内28地区)などで看板等の表示物による周知を行い、市民の皆様の意識向上を図っています。
さらに、まずは市職員がごみ削減に率先して取り組むべく、職員が多く利用する市庁舎内のコンビニエンスストアと連携し、マイカトラリーやマイバッグの使用を推奨し、使い捨てプラスチックの削減に取り組んでいます。
ーータカノメ調査で実態を把握
タカノメ徒歩版は、横浜市が指定している美化重点地区(市内28地区)や喫煙禁止地区(市内8地区)を中心に、調査を検討・実施しています。ポイ捨てごみへの対処の要望が多く、来街者の多い地域を設定することが多いです。
調査の目的は、地区での取り組みの効果測定です。新横浜駅や関内エリア、伊勢佐木長者町、山下町、みなとみらい、横浜駅周辺など、来街者が多く、かつ喫煙禁止地区(伊勢佐木長者町・山下町を除く)である地区は、取り組みの効果測定をする上で適しているため、調査を続けてきました。特に、ラグビーワールドカップや、東京オリンピック/パラリンピックなどのイベントをお迎えする際には、普段よりも一層街の美化を推進するために、タカノメ調査データを利用しました。
ーータカノメ調査のデータ活用
より効果的な委託清掃を行うための清掃場所の選定や、海洋ごみ流出対策を考える際の、検討材料の1つとして用いています。近年はテイクアウトの普及により、来街者の多い地域ではプラごみなどの容器ごみのポイ捨てが課題として挙げられており、区役所で街の美化を推進する担当部署と共に、ポイ捨てごみに関する綿密な情報を参考に、タカノメ調査の計画をしています。
ーープラスチックごみの海洋への流出対策
横浜市には大小さまざまな河川が流れており、ボランティアで河川清掃を行ってくださっている地域の方々が多くいらっしゃいます。また、これは予定なのですが、横浜市内の河川にどれくらいのプラスチックごみがあり、海洋プラスチックごみ問題へと繋がるポイ捨てごみが河川周辺にどのくらいあるのか調査することを検討しています。そこで得られた結果を、啓発や、今後の清掃活動などに活かしていきたいと考えています。
3. 「ごみを拾う人を増やすことは、捨てない人を増やすことにもつながる」
ーー地域の方々の高い環境意識を保つ工夫
1つは環境学習です。横浜市内の焼却工場見学や出前教室などで、ポイ捨てされたごみが海へ流れつく様子を伝える動画を観てもらったり、ポスターコンクールを開催したりするなど、子どもから大人まで幅広い世代に向けて環境意識を高めるきっかけづくりをしています。
他にも、ごみを拾う人を増やす、つまり「街に落ちているごみの清掃活動を活性化させること」は、環境意識の向上における重要なポイントだと考えています。ごみのポイ捨ての未然防止と、清掃活動という2つのテーマは表裏一体です。ごみを拾ってくれる人は、おそらくポイ捨てをしない人であり、ごみが捨てられなければ街は自然と綺麗に保たれますよね。ごみを拾う活動を活性化させることは、ごみが捨てられるのを未然に防ぐ環境づくりに繋がっていくと思います。横浜市の市民力、企業・団体の力は非常に強いので、両方を清掃活動の両輪とすることで、街の美化促進につながると考えています。
ーー今後目指していきたい街の姿や、挑戦していきたいこと
改めて、市民の皆様や企業・団体ボランティアの皆様のおかげで、街の美化が促進されていることに心より感謝を申し上げます。
横浜のような大都市では、地域・企業・ボランティアの皆様で力を合わせて、一人ひとりが環境への意識を高めることで、さらなる街の美化推進が可能になると思います。
個人と地域、そして地域と地域との輪をより一層広げていけるよう、今後とも横浜市も頑張っていきたいと思っています。
企業・団体名:神奈川県横浜市 業種:地方公共団体 ご導入サービス:ピリカ自治体「見える化ページ」、タカノメ徒歩版