「ごみ拾い×青少年教育」見える化と地域を超えてつながる「ありがとう」の輪
ボーイスカウトは、オフィシャルな学校教育に対して、団という地域の組織を中心に「ノンフォーマル教育」を通した青少年の自発的な成長を大切に育む世界的な運動です。国内では、子どもから大人まで約9万人が、自然体験や社会貢献に関連した活動を行っています。
今回のインタビューでは、公益財団法人ボーイスカウト日本連盟100周年記念事業「プラごみバスターズ大作戦」において実施した全国での取り組みや、今回活用したピリカ企業・団体版「見える化ページ」の導入背景、そして山口県周防大島の地域課題のひとつである牡蠣パイプのアップサイクル事業についてお伺いしました。
1. 青少年の「体験を基にした成長」を促し、地域に貢献するボーイスカウト
ーーボーイスカウトといえば、キャンプや自然体験などの活動をされている印象が強いのですが、「社会貢献活動」もされているのですか。
日本では、「団」と呼ばれるグループに、小学1年生から大学生までの「スカウト」と、大学生より上の年齢層の「指導者」が所属し、ハイキングやキャンプなどの体験のほか、清掃活動や募金などの奉仕活動を通して、「良き市民」の育成を目指しています。
公益財団法人ボーイスカウト日本連盟は、2022年で100周年を迎えました。これまで実施してきた活動は数多くあり、その中には半世紀近く続いている活動もあります。
また、各地域の団は、青少年の自主性を重視した「体験を基にした成長」を促す活動を行ってきました。こうした活動を行うにあたって、地域との連携は欠かすことができません。そのため、日頃の地域に対する感謝の気持ちを表すために始めたのが、全国一斉に行う社会貢献活動「スカウトの日」でした。
ーーごみ拾いや清掃活動もスカウトの日の貢献活動なのですね。
全国の団で、ごみ拾いや清掃活動には以前から取り組んでいたのですが、昨今はこれに世界課題であるSDGsの達成などの要素を組み入れた教育プログラムとして、力を入れています。もちろん、「スカウトの日」以外にも、各団で地域に合わせた貢献活動をしています。
ーー2022年の「スカウトの日」には、「プラごみバスターズ大作戦」として大規模なごみ拾い活動を実施されました。
2022年は公益財団法人ボーイスカウト日本連盟が設立100周年ということもあり、子どもたち・スカウトが参加でき、記念となるプログラムを検討してきました。その中で出てきたキーワードが「地域」そして「プラスチック」でした。
以前は、「スカウトの日」のテーマとして、空き缶に注目し、作戦名を「カン(缶)トリー大作戦」としていたことや、たばこの吸い殻が非常に多い時期もありました。
ですが近年、ペットボトルの大量使用が始まって以来、落ちているごみの種類が、ペットボトルをはじめとしたプラスチックに変わってきています。ボーイスカウトの国際組織である世界スカウト機構でも、プラスチックの海洋汚染やマイクロプラスチックのプログラムを導入するなど関心がシフトしてきています。それらを踏まえて今回は「プラスチックごみ=プラごみ」に注目して「プラごみバスターズ大作戦」と名付けました。
ーー活動に参加している子どもたちやスカウトは、年齢が非常にバラバラかと思います。それぞれの年齢の子どもたちに適した教育を行うために、何かされている工夫はありますか?
ボーイスカウトでは、基本的に子どもたちを年齢別に分けることはしておらず、違う年齢の子どもたちが共に時間を過ごすことによる教育効果を狙っているので、むしろ積極的な交流を促しています。
そこで、各年齢層に合わせて作業テキストやシートを作り分けることで、年齢が違っても同じミッションを共有しやすくする心がけをしています。これはボーイスカウトのテキストを作る専門チームが作っており、「単純であること」「ゲーム性があること」「指導者が子どもたちに内容を伝えやすいこと」を重視しながら、子どもたちが楽しんでくれるように作っています。
ーー実際にテキストを拝見したのですが、大人の私が見ても、楽しく、可愛くて、これを見た子どもたちはどんな顔をしてくれるのかな?と想像してしまいました。
実際にごみ拾い活動に参加していた子どもたちからは、どんな声が届きましたか?
子どもたちは「ごみって、こんなにいっぱいあるんだ」という驚きや、「この場所には落ちているけど、この場所には落ちていないね」などの発見を教えてくれました。
特に山口県周防大島での活動では、海岸に打ち上げられている牡蠣パイプの多さに皆驚いていたので、「海岸に落ちているごみはペットボトルや空き缶だけじゃない」ということを、体験を通して教育することができたのではないかと思います。
※牡蠣パイプ:牡蠣を養殖する際に、貝の間隔を保つために利用するプラスチック性の細い筒形のパイプ
2. 「見える化ページ」によって、ごみ拾い活動に関する発信力が向上
ーー今回の「プラごみバスターズ大作戦」では、ごみ拾い活動を可視化できる「見える化ページ」を活用していただきました。「見える化ページ」によって実現できたことはありますか?
まず、ボーイスカウトの社会貢献の取り組みとしてのごみ拾い活動を、社会に発信できるようになったことです。これまでも、拾われたごみの量や参加した人数などの集計は行っていたのですが、10年前まではFAX、5年ほど前からWebフォームを通して報告をもらっていました。今回はピリカを使うことで、拾われたごみが何個、拾ってくれた人が何人ということがリアルタイムに「見える化ページ」に集計されるようになり、取り組みの発信力が高まりました。
さらに、これによって、世界スカウト機構や、国際連合へ活動の報告をする際にも、数値を示しながら報告することができるようになりました。
また、「見える化ページ」に投稿された画像を通して、様々な地域で活動する子どもたちやスカウトの様子を共有することもできるようになりました。普段は自分の所属している地域での取り組みしか見えませんが、ピリカを通じて、他の地域の取り組みが見えてくることで、活動を続ける励みになるのではと考えています。
3. 牡蠣パイプを「拾う」だけでなく「活かす」アップサイクルにも取り組む
ーー「プラごみバスターズ大作戦」では、山口県周防大島にて拾われた牡蠣パイプのアップサイクルに取り組まれました。これに取り組まれた経緯を教えてください。
今回、セブン-イレブン記念財団のご支援で、「ペットボトルキャップをSDGsバッジに」、「牡蠣パイプを買い物かごへ」という2つのアップサイクル事業を実施することができました。
本来、拾った全てのごみをアップサイクルするのが理想です。しかし今回やってみて、アップサイクルがどれほど大変で、様々な制約があるのかがよく分かりました。地元の方にもご参加いただきましたが、地域の改善やアップサイクルを継続していくならば、地域や行政との協力が欠かせないことも再確認しました。
「スカウトの日」は40年以上続く長寿のイベントで、こんなに続いているイベントは他にはありません。それが今回、アップサイクルという形で発展的に実施できたことは個人的に嬉しいです。また昨年12月には「エコプロ2022」にアップサイクル品を出展し、たくさんの子どもたちに完成品を見ていただきました。拾ったごみが製品に再利用される、というリサイクルの流れを目の前で子どもたちに示すことができ、高い教育効果を生み出せたのではないかと感じています。
※エコプロ:環境配慮型製品・サービス、環境関連技術を展示・紹介し、環境問題の解決と持続可能な社会の実現を目指す展示会
4. 最後に、これからごみ拾いSNSピリカを使ってみようという方へのメッセージをお願いします。
ごみ拾いSNSピリカは、投稿すると「ありがとう」がもらえます。子どもたちは、ごみを拾ってピリカで投稿すると誰かから「ありがとう」をもらえる嬉しさで、ごみ拾いを継続してくれています。実際、「プラごみバスターズ大作戦」の期間が終わってからも、「見える化ページ」に表示される拾われたごみの数はどんどん増えてきているんです。7〜11月のプロジェクト期間中に拾われたごみの数は200万個だったのですが、その後12月〜1月で更に200万個増えていて、今でもまだ増え続けているんですよ。時折覗いてみると、10万個単位で拾われたごみが増えている!ということがあり、今回の「プラごみバスターズ大作戦」が、ごみ拾いという社会貢献活動を継続していく上で、よい教育の場となったのではないかと思います。今後も、この「ありがとう」がトリガーとなって、ボーイスカウトの活動に子どもたちが積極的かつ継続的に参加してくれることを願っています。
また、人の顔を映さずに発信できることや、多くの自治体が導入しているということなどの信頼性も特長かと思います。日本全国でごみを拾った人たちが、ピリカを通じてネットワークを形成しており、子どもたちとの親和性も高いアプリケーションだと感じます。子どもたちの取り組みがこうして目に見える形で評価されるのは嬉しいことですね。
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企業・団体名:公益財団法人ボーイスカウト日本連盟 導入サービス:ピリカ企業・団体版、流出ごみ資源化